第1回 眼瞼下垂

 

機能だけでなく美容も十分に考えてくれる医師を選んで
<美容外科手術は、一生一度の手術と捉えて慎重に>

機能だけでなく美容も十分に考えてくれる医師を選んで
<美容外科手術は、一生一度の手術と捉えて慎重に>

高田 「眼瞼下垂」は、文字通り、「眼の上瞼(まぶた)が垂れ下がる」症状です。その原因の多くは、加齢性ですが、最近はコンタクトレンズの使用によって、高校生や中学生でも眼瞼下垂の症状がでることがあります。

まぶたが垂れ下がるだけであれば、眼が小さくなるという容貌の問題だけですが、それだけでなく視野が狭くなり、物が見えにくくなります。

それを本能的にカバーしようとして、眉をあげて見るようになり、それが普段の仕草になってくると、額のシワが増え、放置するとそのシワがさらに深いものになっていきます。

症状がもっと進みますと、眉を上げても上まぶたが上がる効果が少なくなるので、さらにカバーしようとして、あごを上げ始めます。それでも見えにくいので首を後ろに倒すようになると、頸椎が圧迫されて、慢性の肩こりが発生することもあります。

老人を演じる役者は、眉を異常に高い位置に置き、あごを引き上げる仕草をしますが、それは老人性眼瞼下垂の症状を非常にうまく表現しています。


――保険診療の対象になるのはどうしてですか。

高田容貌だけの問題であれば、保険診療の対象にはなりませんが、視野が狭くなったり、肩こりなどの病的症状が起こるので、保険診療の対象になるのです。


――治療はどのように行われるのですか。

高田 上まぶたが開く仕組みは、「上眼瞼挙筋」という筋肉が収縮して、その時にこの筋肉についている「上まぶた皮膚裏側の『腱膜』」が一緒に引き上げられて、まぶたが開きます。

ところが歳を取ると、この筋肉が弱って垂れ下がってきて、「上まぶた皮膚裏側の『腱膜』」が一緒に引き上げられなくなって、眼瞼下垂という症状が起こってきます。

若い人のコンタクトレンズによる眼瞼下垂も、レンズの端が「上眼瞼挙筋」などに当たって、筋力が弱って垂れ下がってきます。

治療は、原則的には二重まぶたを作る手術です。一重の人は二重になり、二重の人はより深い二重になることによって、余分の皮膚が二重の中に取り込まれます。


機能と美容の両方を
満たさなければ、患者さんは満足しない


――眼瞼下垂の手術は、二重まぶたにする手術なのですね。

高田 簡単に言えばそうです。しかし二重まぶたの手術は「美容」がポイントです。一方、眼瞼下垂の手術は、「機能」がポイントです。この「美容」と「機能」の兼ね合いで、いろいろな問題が出てきます。

もっともうまくいけば、「二重できれいになる、眼瞼下垂は治る、しかも保険で安く」できます。実際に「保険でできる二重まぶた手術」と言う感覚で来られる患者さんもおられます。

そういう患者さんは、あまり眼瞼下垂の症状が出ていないと思われるのに、「肩が凝ります」「絶対健康保険でして欲しい」「しかもきれいな二重に」と言われます。

しかし本当に眼瞼下垂で悩んでおられた患者さんで、眼瞼下垂は治ったけれど「二重は好きでないのに二重にされてしまった」「孫からおばあちゃんの顔怖い」と言われる。「手術した方の目と、もう片方の目がアンバランスになってしまった」などの容貌の不満が出てきます。

10年も前であれば、「健康保険を使って安くできたのだから、容貌のことや細かいことは言わないで我慢しようか、もう歳なんだからこれくらいでいいか」、と患者さんも納得したのですが、85歳まで生きる時代になって、50代・60代の人も、機能と同時に、アンチエイジング効果も期待しています。

患者さんの要求度が非常に上がっていて、美容的な仕上がりを求められるようになってきました。

 


――次回へつづく


高田 章好 先生略歴
1980年
近畿大学医学部医学科卒業。
大阪警察病院形成外科医長
大阪大学医学部講師、
大阪大学医学部 形成外科学
美容医療学講座 教授を経て、
大阪大学招聘教授。

専門は、顔面および乳房の美容手術、
美容手術後の醜形の修正