第2回 眼瞼下垂

 

医療施設以前に、医師の技術・経験・人柄を確認することが大切
<美容外科手術は、一生一度の手術と捉えて慎重に>

高田 章好 先生
〈大阪大学医学部招聘教授〉


――コンタクトレンズによる眼瞼下垂は簡単に治るのですか。

高田 治療そのものは、加齢による眼瞼下垂より簡単です。しかし、美容的には難しい場合があります。
たとえば、眼瞼下垂のある目を、二重が広いからと気に入っておられる場合、眼瞼下垂の手術ではそれをさらに折り込むことになりますから、見かけの二重は狭くなります。眼瞼下垂は治して欲しいけれど、二重の巾はこのままにしておいて欲しいという希望です。そういう希望の場合はやはり難しくなります。


医療施設以前に、
医師の技術・経験・人柄を確認することが大切


――眼瞼下垂の手術は、大学病院などの形成外科、美容外科クリニック、時には眼科医院でも受けられます。また健康保険が使える医療施設、自費診療しかできない医療施設もあります。どこで受ければいいのか迷う患者さんが多くおられますが。

高田 まず、眼瞼下垂は目の周辺の「皮膚・筋肉」の問題ですし、眼科医の多くは主として「眼球」が対象です。次に、眼瞼下垂だけではありませんが、大学で、形成外科も美容外科もしっかり研修を受けていない、自称美容外科医のいるクリニックで受けないのは当然です。

また大学病院などの形成外科医は、機能面では治療できても、容貌など、患者さんの高い要求にも対応できるかどうかは、医師によります。形成外科も美容外科もしっかり研修を受けた医師が適任です。

健康保険は、ほとんどの大学病院で使えますが、多くの美容外科クリニックでは使えません。また使える医療施設でも、患者さんの症状によって使えない場合もあります。

医療施設で選ぶとすれば、保険診療と自費診療をしてくれる美容外科クリニックが良いということになりますが、両方使えるからと言って、必ずしも上手な医師かというとそうでもありません。医療施設以前に、その医師の技術・経験・人柄を確認することが大切です。

――最近、「眉下皮ふ切除術」という手術法があるということですが。

高田 眼瞼下垂の症状は、眉毛とまつ毛の間の皮膚が余ってきて、その余った皮ふが眼球の上にかぶさってきて、視野が狭くなってきます。そこで今までは二重まぶたにして、二重の部分に余った皮ふをたくし込むようにしていました。

しかし、余った皮ふを減らすのは二重の中でなくても、眉毛の下で切除してもいいわけです。そこで眉毛の下の部分の皮膚を切って縫い合わす方法が考えだされました。

元々この術式は、眼を大きく見せるために開発されましたが、二重によって眼瞼下垂を治す方法は、二重がクッキリして怖い顔になる場合もあり、そういう場合はこの「眉下皮ふ切除術」が適応と考えられます。軽度の眼瞼下垂で、目元の印象をあまり変えないで改善する一つの方法です。


カウンセリングの日の同日手術は絶対避ける
十分に考える時間を取って


――最後に、眼瞼下垂も含めて、上手に美容外科医、形成外科医にかかるには、
どうすれば良いかというアドバイスを。


高田 まず、宣伝・広告に惑わされないで、十分に調査をして自分が受けたいと思うクリニックを選んで、自分の症状・希望をしっかり言って、治療法もしっかり聞いて、患者さん自身でしっかり理解することです。その上でセカンドオピニオンとしてもう1、2か所のクリニックでカウンセリングを受けて、総合的に判断することです。

カウンセリングを受けたその日に手術を受けることはするべきではありません。ベルギーやオランダでは、美容外科の同日手術は認めないと決まっています。

私の場合は、患者さんがカウンセリングに来られた時にはゆっくりお話をして、デメリットもきちんと説明して、必ずもう一度よく考えてもらいます。すぐに手術を決めることはありません。多くの患者さんは他のクリニックへもカウンセリングに行かれますが、最後には私のところに戻ってきます。冷静になって考えると、デメリットをしっかり言ってくれる医師が本当だと納得されます。


――多くの美容外科医院で、医師にノルマがかけられていて、カウンセリングに行くと、考える時間を与えないで
「なんとか、今日手術を受けさせよう」とするところがあると聞いていますが。


高田 そういう医院は手術数を多くしようとしています。医療事故が多発するのも当然です。

患者さんの中にも、美容外科手術を非常に安易に考えて、美容院でパーマを当てるのと同じ感覚で、手術を受けられる方がおられます。はじめから「今日手術希望です」と申し込んで来られる方も多くいます。美容外科手術は、一生に一度の、自分自身の将来を決めるかもしれない治療です。慎重の上にも慎重を期して、十分に納得して受けられることをお勧めします。

最後にもう一つ、保険診療ができるかどうかということでの最近の話題は、昨年保険診療が認められた、「乳房再建」です。乳房再建に人工シリコン、インプラントを使用することが保険で認められて、さらに下が少し膨れてるタイプのシリコン「アナトミカルタイプ」も認められました。
眼瞼下垂でも「医療施設以前に、医師の技術・経験・人柄を確認することが大切」と申し上げましたが、「乳房再建」でも、健康保険が使えるのだから、どの医師でもできると考えないで、医師選びを慎重にされることをお勧めします。


――ありがとうございました。 

 


高田 章好 先生略歴
1980年
近畿大学医学部医学科卒業。
大阪警察病院形成外科医長。
大阪大学医学部講師、
大阪大学医学部 形成外科学
美容医療学講座 教授を経て、
大阪大学招聘教授。

専門は、顔面および乳房の美容手術、
美容手術後の醜形の修正