第1回 ips細胞 再生医学研究の最前線

 

山中教授のグループは血液からips細胞を作り出す方法を発見

1月27日、「ips細胞 再生医学研究の最前線」と題した講演が神戸芸術センターで行われた。

この日は帰国後初めての講演となる、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大学ips細胞研究所教授(「ips細胞ストックの構築に向けて」)も登場するということで、多くの申込者の中から、抽選で選ばれた約900人が耳を傾けた。

講演は山中教授を含め、5人の最先端医療関係者がips細胞を用いて、様々な研究や実験の報告を行った。

この日は会場の高校生から、将来ips細胞の研究に携わるにはどういう進路をとればいいかなどの質問も出され、無限の可能性を秘めたips細胞への関心の高さがうかがわれた。

約3時間に及んだこのシンポジウム。
登壇したのはいずれもips細胞に詳しい医療関係者ばかり。

最初に登場した笹井芳樹・理化学研究所発生・再生化学総合研究センターグループディレクターは、「試験管の中で臓器を作る:幹細胞研究の新挑戦」。

次いで岡野栄之・慶應義塾大学医学部教授が「ips細胞を用いた中枢神経系の再生・疾患研究」、中内啓光・東京大学医学部研究所教授は「ips技術を利用した新しいがん免疫治療」、井上治久・京都大学ips細胞研究所準教授の「ips細胞作製技術を用いた神経疾患の研究」と続いた後に、注目の山中教授の講演となった。


山中 伸弥 先生<京都大学教授>講演

注目の山中教授は、まずノーベル賞受賞の挨拶。その後で誰でも分かるようにips細胞とは何かを説明した。

既に50年前にips細胞の元をJ・ガードン博士が発見

「私たちの体は全てひとつの受精卵からできています。
未成熟な細胞が細胞分裂を繰り返しながら、様々な細胞に変化していきます。
そして出来上がるのが体です。

しかし、その細胞も昔からいったん分裂すると、元には戻れないと信じられて来ました。
ところが1962年にジョン・ガードン博士が、少しだけ戻れることを発見しました。
これがクローン技術です。

教授は腸の細胞から新しいオタマジャクシを作ることに成功したのです。
分化した細胞でも帰化しうるんだということを証明したのです。
ですから細胞が再生すると言う事象は、50年前に発見されていたのです。

でも、ゴードンが用いたのは、世界でも成功率も低く数人しかできない核移植という非常に難しい方法なのです。

対して私たちが研究しているips細胞は、簡単な方法で分化した細胞を再現するのです。」

――次回へつづく。


【山中 伸弥 先生略歴】

1987年 神戸大学医学部卒業、国立大阪病院で整形外科の研修医に。
1993年 大阪市立大学大学院医学研究科修了。
米グラッドストーン研究所博士研究員、
奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター教授などを経て、
2004年から京都大学再生医科学研究所教授。
2010年4月から京都大学iPS細胞研究所長。