メディカルトピックス

キーワードとなったのは

地域医療におけるクリニックのありかた。

 

「かわもと耳鼻咽喉科クリニック」院長

河本 光平先生

 

金子敏彦医師(金子耳鼻咽喉科院長/大阪市阿倍野区)

「クリニックでの日帰り手術の実現を目指して、お互い切磋琢磨してきた先生です。

最新の機材・優しく丁寧な説明・高度な技術で安心して日帰り手術を受けていただけ

ると思います」

 

「手術をしない」クリニックにはしたくなかった

 

――耳鼻咽喉科は医療上では外科に分類されます。クリニック開院の出発点となったのは外科手術へのこだわりだったそうですね。

「一般的に耳鼻咽喉科では薬物の投与による治療が中心となります。ですから耳鼻科を受診されるほとんどの方は手術ということを意識されないと思います。しかし病態によっては外科的な手術を必要とするケースも少なくありません。

たとえば、炎症を起こして鼻汁や鼻づまりなどの不快な症状をくり返す慢性副鼻腔炎、耳漏じろう(耳だれ)によって聞こえが悪くなる慢性中耳炎、常時鼻づまりを感じる鼻中隔弯曲症わんきょくしょうなどは手術(鼻中隔矯正術)をすることで治る疾患もあります。日帰り手術になると無事に手術を終えたあとは帰宅していただけるので患者さんへの負担も小さいのです。

私は大学病院や地域医療の基幹とされる病院での勤務医時代には多くの手術に携わり、様々な耳鼻科疾患をもつ患者さんに接することができました。その中で、「手術」が患者さんへ与えるインパクトを実感し、耳鼻科の専門医として患者さんに継続して提供できる環境を作りたいと考えていました。大きな病院ではいろいろな規則があり、自分の考えで方針を変えることもできませんし、手術器械を購入することも難しいです。

しかしクリニックなら私の考えですべて変更することができますし、患者さんにとってよいものは手術器械でも新しいものをどんどん取り入れていくことが可能です。そういった理由から手術ができるクリニックを作れば、結果として患者さんを術前から術中、術後もすべて私が診察し、治療を完了することができます。これは外科医冥利につきる環境です」

 

――そのような医療環境を実現することを目指されたわけですね。

「私自身は20年以上もこの分野で学び、耳鼻咽喉科の専門医として自分なりに知見を深め、手技についても経験を重ねてきたという自負があります。できることなら術前から術後までを含めたトータルな医療ができる体制を整え、耳鼻咽喉科としていろいろな疾患治療に万全を尽くすことができるクリニックしたかった。それによって患者さんの健康維持と地域社会に貢献できるクリニックでありたいと思ったんです」

 

――その思いが2016年2月の開院につながった、と。

「はい。手術をしないクリニックを開院するという選択肢は最初からありませんでした」

目指したのは総合病院と

地域の診療所をつなぐポジション。

 

開院のコンセプトは「総合病院と診療所の中間に位置するクリニック」というものでした。

「総合病院は医師や看護師など豊富な医療スタッフを擁しているだけでなく最新・最先端の機器・設備を導入して高度な医療体制を確立し、難治性のものも含めて幅広く多様な疾患に対応しています。一方、診療所は地域社会に根ざしつつ、疾患治療に関わる患者さんからのさまざまな要望や相談を真摯に受け止め、きめ細かな取り組みを通じて地域医療を担う使命を果たす存在です。それが「手術をするなら総合病院」、「それ以外の日常的な受診と治療は診療所(クリニック)」という棲み分け意識を生んだのではないでしょうか。

私のクリニックではそれぞれの医療機関が果たしているメリットや役割を一体化させることを目指しました。具体的に言えば最新の医療機器の導入と、それを活用した手

術をすることで地域の患者さんにとって最適の治療環境を提供することです」

 

――日帰り手術もそのコンセプトから生まれたのですか?

「開院当時、耳鼻咽喉科の分野で日帰り手術を行うクリニックは限られていました。今でも兵庫県下では数件の医療機関でしか実施していないと思います。日帰り手術であれば患者さんの日常生活に負担を与えることは少なく、仕事を持っておられる人にとっても早期に現場復帰できるという利点があるのですが、日帰り手術を実施しているクリニックはまだまだ少数みたいですね」

 

――なぜでしょう?

「慢性副鼻腔炎や鼻中隔弯曲症の手術は難易度が高く、医師の技量に深く関わることが一因でしょうが、手術によるリスクを負いたくない、術後の患者さんのケアがクリニックによっては難しいということもあるかもしれません」

24時間体制での

 術後ケアと患者サポート

 

――たとえば鼻中隔矯正術は約1~2週間の入院が必要とされていました。日帰り手術を可能にしたものは何でしょうか。

「要因としては医療器材の進化を挙げることができますね。たとえば私たちのクリニックでは被曝線量が少なく、座ったまま撮影可能なコーンビームCT、4Kのハイビジョンカメラシステムを搭載した内視鏡を使用していますが、それによって把握すべき病態の情報量が格段に多くなりました。解像度が高い画像は病変の発見を容易としただけでなく、病態の特定が可能となります。それは的確な手術を行うために欠かせないことなんです」

 

――機材の充実によって総合病院の役割に近づいたわけですね。どんな術例が多いのですか?

「先ほど申し上げた慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎などですね。いずれも内視鏡をフルに活用し、患者さんや患部へのダメージの少ない低侵襲で短時間の手術を心がけています。

現在は午前診(9時~12時)と午後診(16時~19時)の合間を利用して手術を行っています。手術は月に20~25件ほどですが、開院以来の術例数を申し上げれば600件近くになります。このうちもっとも多いのは鼻中隔矯正術、慢性副鼻腔炎です」

 

――術後のケアとサポートについてご紹介ください。

「鼻粘膜はきわめてデリケートな組織なので、ごくまれに術後出血が生じる場合があります。そのため患者さんが帰宅されたのちの午後7時頃には必ず電話で異常の有無をお聞きしており、急変時に備えて私個人の携帯電話番号をお伝えしています。24時間のフルサポートになりますが、責任医師としては当然のことですね。最近はスカイプ(テレビ電話アプリ)での対応も可能となりました」

 

――「総合病院と診療所の中間に位置するクリニック」実現への取り組みがよく理解できました。これからの展開についてはどうお考えですか?

「手術をするならクリニックよりも総合病院で、という方も少なくありません。そうした先入観を払拭し、より多くの人に身近なクリニックでの日帰り手術を理解していただくように取り組みたいと思いますね。そのために手術できる時間帯の拡大、万全を期するために医師や看護師のスタッフ増員も考えています」

 

※  クリニックは待合室や診察室は明るくてムダがなく清潔感にあふれ、受診者に負担をかけない動線を意識した院内レイアウトも印象的でした。壁面にはミシガン大研究員時代の思い出となるポスターも飾られています。河本院長は耳鼻咽喉科の医師として現状にとどまることを善しとせず、「最新の医療は医師が向上心を持って勉強」すべきという考えから研究成果の学会発表発に積極的であり、専門医として常にその先を見つめたいという姿勢と意欲を強く感じました。

河本 光平先生 主な略歴

1997年  関西医科大学卒業

1998年  沖縄県立宮古病院耳鼻咽喉科

1999年  ミシガン大学クレスゲ聴覚研究所研究員

2008年  大阪府済生会野江病院耳鼻咽喉科部長

2010年  関西医科大学香里病院耳鼻咽喉科医長

2012年  香里病院耳鼻咽喉科部長

2016年  かわもと耳鼻咽喉科クリニック開院

 

≪データ≫

医院名   かわもと耳鼻咽喉科クリニック

院長名   河本光平先生

診療科目  耳鼻咽喉科 アレルギー科

診療時間

●外来診療

9時~12時  月~水・金・土

 16時~19時  月~水・金

●手術対応

13時~15時半 月~水・金

●休診     木・日祝日

所在地   〒661-0979 兵庫県尼崎市上坂部1-4-1

ミリオンタウン塚口2階

電話番号  06-6494-8700