EXPO2025 日本国際博覧会協会

「共闘」で2025年に

「新たな万博」を

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

 事務総長  石毛 博行 氏

2025年日本国際博覧会協会の事務総長に就任し半年が経過しました。この間、多くの有識者を訪問し、万博に対する考えをお聴きして参りましたが、2025年の万博には、分野や世代を問わず、皆さん等しく関心と期待をお持ちであることを実感しました。とりわけ、1970年の大阪万博を経験された方々の万博に対する思いは強く、70年万博が人や社会に与えたインパクトや影響力の大きさを再認識しました。

 

70年万博では、「太陽の塔」をはじめ「月の石」や「ワイヤレステレフォン」、「動く歩道」などのモニュメントや先端技術の展示などが人々を驚かせ、万博は、近未来の世界を見ることができる場として大きな注目を集めました。その結果、来場者数は目標の3千万人を大幅に上回る6400万人に及び大阪万博は『工業化時代の万博』としてピークに位置づけられ、人々に大きなインパクトを残し、大成功を収めました。

 

しかし、あれから50年、時代は大きく変わりました。わが国の経済は低成長の時代となり、2011年以降は毎年人口が減少すると共に65歳以上の高齢者の割合は、当時の7%から今では28%を超えています。わが国は、低成長、人口減少、少子高齢化の時代を迎え、「成長の時代」から「成熟の時代」に変わりました。今や国威発揚を目的として各国が競い合う時代ではありません。また、各地で様々な展示会や見本市が開催され、インターネットで世界の先端技術や製品の情報をリアルタイムで入手できるなど、日本のような成熟した市場を持つ先進国における従来型の万博を取り巻く環境は、確実に厳しくなっています。

 

もちろん、良い条件もあります。ひとつは、「アジアン・パワー」です。成長著しいアジア全体で考えた場合、その経済成長力は70年当時を大幅に上回ります。このパワーで新たな展開を生み出すことは可能です。二つ目は、「大阪・関西の観光魅力」です。寺社、古墳といった歴史遺産、「食」や「水の都」などは大きなアピールポイントとして活用できます。三つ目は、「五感の大切さ」です。インターネットの時代だからこそ、五感でリアルに感じることが重要になっています。「万博会場に行ってみないとわからない魅力」を発信するチャンスです。四つ目は、「万博の経験とノウハウ」です。日本は、70年万博から5回も万博を主催しました。この経験やノウハウを使えることは大きなメリットだと思います。

 

このようなアドバンテージを有効に活用し、SDGsという人類共通の目標達成に向け、そして、その先を見据え、2025年に「新たな万博」を開催したいと思います。「新たな万博」では、従来の「先端技術を見せる」万博から、さらに歩を進めて、「いのちが輝く未来社会とはこうなるんだ」ということが体感できる万博を実現します。5G、第4次産業革命、Society5.0の中で一人ひとりが生き生きと暮らす社会とはどのようなものか?未来社会で享受できる快適さや便利さとはどんなものか?このようなことを世界の国々と具体的にお示ししたいと考えています。

 

そして、その前提条件として、ふたつの大きな課題にも取り組みます。ひとつが、万博に最新技術を導入し、統合することです。日本は、個別の企業・大学には優れた技術や人材を有していますが、これが旨く繋がっていないかもしれません。万博をひとつの契機として、様々な技術や人材を繋いで新たな研究やビジネスを生み出して行きたいと思います。もうひとつは、会場を「未来社会の実験場」にすることです。自動運転、ドローン、ライフサイエンス、データ利活用、などが実現するような「未来のスーパーシティー」を構築したいと考えています。特に万博で得られるビッグデータは、万博の大きなアドバンテージだと思います。

 

万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」です。これは、人の「いのち」や健康に向き合っておられる皆様方に深くかかわるテーマです。また、「新たな万博」は、様々なセクターと「共に創る」万博を目指しています。2025年に「世の中を変えるきっかけになる」ような、そして、大阪・関西ならではのお笑い文化を活かした「おもろい万博」を一緒になって創り上げるため、皆様の万博へのご参画、ご協力をお願い申し上げます。「新たな万博」を「共創」で実現し、世界の国々とともに成功に導きたい。その一念で引き続き万博に取り組んで参りますので、皆様におかれましては、ご支援ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

 

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 

2019年1月末発足。同年5月末に「万博特措法」に基づき、2025年万博を実行する法人として経済産業大臣の指定を受ける。事務局は咲洲の大阪府庁舎に設けられ、職員は国、地元自治体、企業等からの派遣で構成されている。

 

 

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 事務総長

石毛博行(いしげ ひろゆき)氏

【略歴】

生年月日:昭和25年12月8日

昭和49年 東京大学経済学部卒業

     通商産業省(現経済産業省)入省

平成16年 製造産業局長

平成18年 中小企業庁長官

平成19年 通商政策局長

平成20年 経済産業審議官

平成23年 独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長

令和 元年 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 事務総長