宝塚病院

 突然死をめぐる宝塚病院の取り組み 

医療法人回生会 宝塚病院

  

~第1回「防ごう 突然死」市民公開講座~

 

つい先ほどまで普段と変わらずに生活し、元気だった人が発症から僅か24時間以内に死亡する突然死。まさに急逝というほかはなく、家族は深い悲しみに包まれます。突然死のほとんどは急性心筋梗塞や狭心症、脳卒中や脳梗塞など心臓と脳の疾患に由来します。とくに多いのが心疾患を原因とするもので、年間約10万人、1日では約250人が命を落とすと言われます。ちなみに似て非なるものに「急死」がありますが、これは症状が急変して死に至るもので直前の健康状態は問われません。

突然死は事前に防ぐことは難しいと思われていますが、病態についての正しい知識を身につけ、心臓検診などの定期的な健康チェックを受ければ突然死を回避し、悲劇を少しでも減らせることは可能と考えているのが医療法人回生会塚病院の馬(ば)殿(でん)正人院長です。

  同病院ではこれまでに次世代型心臓検査CTの導入(本誌81号で紹介)、狭心症・心筋梗塞などのリスクを日帰りでチェックできる心臓ドック、日本で初めての「心臓検査ギフトカード」の発売、会員制で日常的な健康管理をサポートする「宝塚病院友の会」など、医療機関として様々な新機軸を打ち出していますが、基本にあるのは「治す医療だけではなく、防ぐ医療」という考え方。この姿勢を具体化させたのが同病院主催による第1回「防ごう 突然死」市民公開講座です(3月21日。宝塚市・アピアホール)。

講座開催の目的について馬殿院長は「急性心筋梗塞を発症する前に病気を早期発見することがもっとも有効な突然死の予防になります」と述べ、こうした取り組みを通じて地域の医療機関としての責務を果たし、地元への貢献を目指したいと語ります。

当日は朝から雨模様でしたが、高齢の方を中心に多くの人びとが会場を訪れ、突然死に対する関心の高さがうかがえました。

馬(ば)殿(でん)院長の挨拶に続いて専門医によって「突然死はなぜ起こる?」(同病院副院長・中村誠志医師)、「知ってほしい心臓と足の血管の病気」(同病院循環器内科・塚芳明医師)、「突然死の主な原因であるクモ膜下出血を学ぼう」(医療法人桜希会東朋八尾病院長代理・小田(しょうだ)恭弘医師)の講演が行われました。中でも印象に残ったのが「身近な病院をうまく使って欲しい」という中村副院長の言葉です。

 

 いずれの講演でも図表や写真、イラスト、動画などが駆使され、心臓や脳疾患の病態とその経緯や変化だけでなく、現状での突然死が起こるメカニズムについてのわかりやすい解説があり、熱心にメモを取る聴衆の姿も見受けられました。

また、機能が低下している心臓の弁(大動脈弁)を人工の弁と置き換える経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)、急性心筋梗塞では風船で血管を拡げるバルーンカテーテル、金属製のパイプを用いるステント、再狭窄を抑える薬剤を塗布した薬剤溶出性ステント(DES)による冠動脈インターベンション(PCI)などの再灌流(かんりゅう)療法など最新の治療法についても詳しく紹介され、初めての公開講座としてはかなり充実したものであったと思います。

突然死の要因となる疾患を生みやすいのは動脈硬化、糖尿病、高血圧、塩分の過剰摂取であることから、会場内には血管年齢を知るための検査、血糖値の測定、食生活における減塩チェックなどのコーナーが設けられ、現役の看護師、栄養士が対応しました。