南京都病院

一般急性期病院では対応困難な

疾患・障害対象の専門医療に特化

 

全国142の病院を一つの法人として運営している、独立法人国立病院機構。京都府城陽市の南京都病院はその一施設であり、「政策医療」分野における神経・筋疾患、呼吸器疾患、重症心身障害、育成医療、長寿医療などの専門医療施設として、地域に欠かせない存在となっています。南京都病院ならではの役割や教育機関との連携など、さまざまな独自の取り組みについて。

独立行政法人国立病院機構 南京都病院

院長 宮野前健先生

   

政策医療中心という独自の

スタンスで取り組む医療活動

 

―――前身が傷痍軍人京都療養所だと伺いました。

 はい、当院は1939年に傷痍軍人京都療養所(旧結核療養所)として開院し、後に厚生省(当時)に移管され国立京都療養所から国立療養所南京都病院と改称しています。その後2004年から旧国立病院と療養所が一つの独立行政法人国立病院機構として再編成されて、当院もその一員となり今日に至ります。

 

―――「政策医療」とはどのような医療のことですか?

 「政策医療」は、一般の方にとってはあまり聞きなじみのない言葉だと思います。国民の健康を守るために国が率先して取り組むべき医療が「政策医療」です。例えば、戦前・戦後においての最重要課題は「国民病」と言われ恐れられていた結核の蔓延防止でした。特に、働き盛り、集団生活を送る若者(兵隊さん)の病気は最小限に抑える必要があり、全国各地に結核の療養所が作られました。こうした歴史を持つ当院は、結核患者の減少に伴い、その後継医療として、一般急性期病院では対応が難しい疾患・障害を対象として専門医療を提供してきました。結核をはじめ感染性肺疾患や、慢性閉塞性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器系疾患、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病や認知症を含むさまざまな神経疾患、重度な知的・身体性障害を併せ持つ重症心身障害や、喘息などの小児慢性疾患に取り組んで来ました。このような「政策医療」分野は、急性期病院では対応しにくく、主に旧療養所系の国立病院機構病院が担い、「セーフティネット医療」として位置付けられています。

 

旧療養所としての歴史を踏まえた

取り組みについて

 

―――病院の得意分野としては、呼吸器疾患ということになりますか?

 そうですね。長年結核医療に取り組んできた歴史の反映です。当院は呼吸器科医が9名、神経内科医が4名、小児科医は僕を含め7名の陣容で、呼吸器外科医及び腹部外科医が各2名、放射線診断医が1名、合計常勤務医は25名です。この診療科医師数から当院の特徴・専門性が判ると思います。また、関連する診療領域は非常勤医師の方々にも出務していただいています。地域で生活されている在宅酸素療法や非侵襲的人工呼吸器管理が必要な慢性閉塞性呼吸器疾患や、睡眠時無呼吸症候群の方々も多く、また人工呼吸器管理が必要な神経難病、さらに在宅重症心身障害児・者への在宅医療支援も、国立病院機構が掲げる方針に沿って行政と連携して積極的に行っています。

 

―――京都府立城陽支援学校と連携されているそうですね。

 昭和50年代、まだ有効な治療手段が無かった重症喘息やネフローゼなどの慢性疾患を持つ子どもたちは長期入院・療養が必要でした。その子どもたちの受け皿として、当院は小児慢性疾患に取り組み、喘息の子どもたちが京都府外からも多く入院してきました。しかし、子どもたちにとって入院することは学校教育から離れることを意味しました。そのため京都府と協議して、養護学校から先生方を派遣してもらう訪問教育を始めました。その後、教育の対象は重症心身障害者たちにも拡大し、隣接して現在の京都府立城陽支援学校が昭和61年に設置され、既に30年以上の歴史を刻んでいます。

 

【京都府立城陽支援学校】

重心教育部(南京都病院に入院している重度の知的障害・肢体不自由度等のある重症心身障害児を対象に、病院と密接に連携した教育を行う)

病弱教育部(喘息、腎炎、肥満症、精神疾患等の慢性疾患や腹痛・頭痛などの身体的症状を伴う小児心身症・身体虚弱及び不登校等により小・中学校生活が困難で入院加療を必要な児童を対象に教育を行う)

 通学高等部(中学校を卒業した自主通学可能な軽度の知的障害児童を対象に教育を行う)

 

―――今後の課題は何でしょうか?

 近年は入院する子どもたちの疾病構造が大きく変わりました。心身症や不登校、発達に関するさまざまな課題を抱えた子どもたちに対して、支援学校と連携をとりながら専門的医療を行っています。このような子どもたちとは時間をかけてしっかり向き合う必要があり、一般の急性期病院での対応は難しいので、今後より教育サイドと連携をとりながら強化しなくてはと考えています。発達障害の中には時に精神疾患も含まれ、必要な場合は児童精神科へ紹介することもあります。だいたい1学期間を入院期間の目処としていますが、4月の新学期スタート時には入院は少なく、毎年夏休み後に増加傾向が続いています。入院の経験がその子どもにとってプラスになるよう、退院後に家族を含め地域の学校との連携をどうとっていくかが大きな課題です。また、当院から学校に通う重症心身障害児は年々重症化が進み、人工呼吸器管理などの「医療的ケア」を日常的に必要とするようになりました。そのため、支援学校には“学校看護師”が配置され、担当教諭にも喀痰吸引などの「医療的ケア」が行えるよう制度に基づいて研修も実施しています。病棟スタッフと日々情報を交換しながら学校での教育活動の中、先生方は豊かな表情を子どもたちから引き出してくれています。

 

―――在宅支援についてはいかがでしょうか?ご家族の負担も大変かと…

 その通りです。ですから当院でも、地域連携室や重症心身障害医療の福祉面を担当する療育指導室を中心に充実を図り、在宅支援機能を強化しています。神経難病、重症心身障害、慢性呼吸不全などで人工呼吸器管理や在宅酸素療法を受けておられる方々のセーフティネット機能として、“家族の休息”のためのレスパイト入院や短期入所を積極的に実施しています。また、在宅医療を支える地域の福祉事業所や訪問看護ステーションのスタッフへの研修会も実施しており、当院の機能を活かした「医療的ケア」の重症心身障害病棟での実習の場の提供なども行っています。レスパイト入院や短期入所の受け入れは年々多くなってきていますが,緊急の利用などには十分応えられていない現状があります。地域や福祉・保健行政に働きかけながら、さらに「政策医療」の重要性を発信し、当院の持つ専門性を研修会・講習会などを通じて提供していきます。

 

旧療養所としての歴史を踏まえた

取り組みについて

 

―――病院の得意分野としては、呼吸器疾患ということになりますか?

 そうですね。長年結核医療に取り組んできた歴史の反映です。当院は呼吸器科医が9名、神経内科医が4名、小児科医は僕を含め7名の陣容で、呼吸器外科医及び腹部外科医が各2名、放射線診断医が1名、合計常勤務医は25名です。この診療科医師数から当院の特徴・専門性が判ると思います。また、関連する診療領域は非常勤医師の方々にも出務していただいています。地域で生活されている在宅酸素療法や非侵襲的人工呼吸器管理が必要な慢性閉塞性呼吸器疾患や、睡眠時無呼吸症候群の方々も多く、また人工呼吸器管理が必要な神経難病、さらに在宅重症心身障害児・者への在宅医療支援も、国立病院機構が掲げる方針に沿って行政と連携して積極的に行っています。

 

―――京都府立城陽支援学校と連携されているそうですね。

 昭和50年代、まだ有効な治療手段が無かった重症喘息やネフローゼなどの慢性疾患を持つ子どもたちは長期入院・療養が必要でした。その子どもたちの受け皿として、当院は小児慢性疾患に取り組み、喘息の子どもたちが京都府外からも多く入院してきました。しかし、子どもたちにとって入院することは学校教育から離れることを意味しました。そのため京都府と協議して、養護学校から先生方を派遣してもらう訪問教育を始めました。その後、教育の対象は重症心身障害者たちにも拡大し、隣接して現在の京都府立城陽支援学校が昭和61年に設置され、既に30年以上の歴史を刻んでいます。

 

【京都府立城陽支援学校】

重心教育部(南京都病院に入院している重度の知的障害・肢体不自由度等のある重症心身障害児を対象に、病院と密接に連携した教育を行う)

病弱教育部(喘息、腎炎、肥満症、精神疾患等の慢性疾患や腹痛・頭痛などの身体的症状を伴う小児心身症・身体虚弱及び不登校等により小・中学校生活が困難で入院加療を必要な児童を対象に教育を行う)

 通学高等部(中学校を卒業した自主通学可能な軽度の知的障害児童を対象に教育を行う)

 

―――今後の課題は何でしょうか?

 近年は入院する子どもたちの疾病構造が大きく変わりました。心身症や不登校、発達に関するさまざまな課題を抱えた子どもたちに対して、支援学校と連携をとりながら専門的医療を行っています。このような子どもたちとは時間をかけてしっかり向き合う必要があり、一般の急性期病院での対応は難しいので、今後より教育サイドと連携をとりながら強化しなくてはと考えています。発達障害の中には時に精神疾患も含まれ、必要な場合は児童精神科へ紹介することもあります。だいたい1学期間を入院期間の目処としていますが、4月の新学期スタート時には入院は少なく、毎年夏休み後に増加傾向が続いています。入院の経験がその子どもにとってプラスになるよう、退院後に家族を含め地域の学校との連携をどうとっていくかが大きな課題です。また、当院から学校に通う重症心身障害児は年々重症化が進み、人工呼吸器管理などの「医療的ケア」を日常的に必要とするようになりました。そのため、支援学校には“学校看護師”が配置され、担当教諭にも喀痰吸引などの「医療的ケア」が行えるよう制度に基づいて研修も実施しています。病棟スタッフと日々情報を交換しながら学校での教育活動の中、先生方は豊かな表情を子どもたちから引き出してくれています。

 

―――在宅支援についてはいかがでしょうか?ご家族の負担も大変かと…

 その通りです。ですから当院でも、地域連携室や重症心身障害医療の福祉面を担当する療育指導室を中心に充実を図り、在宅支援機能を強化しています。神経難病、重症心身障害、慢性呼吸不全などで人工呼吸器管理や在宅酸素療法を受けておられる方々のセーフティネット機能として、“家族の休息”のためのレスパイト入院や短期入所を積極的に実施しています。また、在宅医療を支える地域の福祉事業所や訪問看護ステーションのスタッフへの研修会も実施しており、当院の機能を活かした「医療的ケア」の重症心身障害病棟での実習の場の提供なども行っています。レスパイト入院や短期入所の受け入れは年々多くなってきていますが,緊急の利用などには十分応えられていない現状があります。地域や福祉・保健行政に働きかけながら、さらに「政策医療」の重要性を発信し、当院の持つ専門性を研修会・講習会などを通じて提供していきます。

 

【宮野前 健院長の経歴】

1977年 京都大学医学部卒業後、小児科に入局。その後、倉敷中央病院、京都大学大学院医学研究科、京都大学医学部小児科学教室を経て、3年間グスタフルーシー研究所(フランス)に留学。帰国後1989年 兵庫県立尼崎病院

小児科医長、1990年 国立療養所南京都病院(現 国立病院機構南京都病院)小児科医長に。1998年 同副院長、2012年 同院長に就任。小児医療・障害児医療に取り組む。国立重症心身障害協議会・理事、国立小児医療協議会・会長。