【シリーズ3】患者さん本位の診療にさまざまの取り組み

~大阪大学医学部付属病院広報誌よりご紹介~

痛みの本質に迫り心身を包括的治療的に治療 疼痛医療センター

疼痛医療センターは、難治性の痛みに苦しむ患者さんのため平成18年に開設されました。痛みは患者さんにとって、最も深刻な症状です。一人一人の患者さんの痛み、苦しみを十分に理解したうえで適切な個別治療を行うため、麻酔科、脳神経外科、整形外科、神経内科・脳卒中科、神経科・精神科に、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士などが緊密に連携し、患者さんのQOL(生活の質)やADL(日常生活活動度)に配慮したチーム医療を行っています。

「痛みの診療と研究に特化した専門組織は、日本では新しい試み。従来のような診療科別のアプローチでは治癒しなかった難治性の痛みを持つ患者さんが、全国から来院されています」と、センターの基盤づくりに携わる柴田政彦教授(疼痛医療センター・疼痛医学)は話します。ストレスなどの心理的要因にも着目し、昨年6月、初診の患者さんに対する「特殊外来」を新設。毎週金曜日に、医師・臨床心理士・理学療法士による丁寧な問診を行い、各診療科の専門医による診断の後、投薬・リハビリテーション・運動療法・認知療法・神経ブロック・手術・神経刺激療法など、患者さんに合った適切な治療を提案しています。

同センターは新しい治療法の開発にも取り組んでおり、齋藤洋一特任教授(脳神経機能再生学・脳神経外科)は、慢性疼痛に対する経頭蓋磁気刺激療法を開発し注目されています。齋藤特任教授は頭蓋骨の外側から頭部のある部分に磁気刺激を与えることで、鎮痛効果が確認されています。患者さんの身体への負担が少なく、在宅で使用できる装置を共同開発し、来年には治験を開始する予定です」と話し、さらに、リアルタイムで脳磁図(脳機能を視覚化したもの)による脳のトレーニングで痛みを軽減する研究も進めています。

痛みには未知の部分が多いのですが、このような先進的な診療・研究により疼痛医療の発展に貢献し、今後の標準的治療を確立していきたいと考えています。

【阪大病院ニュース56号】 2014年10月25日