歯科矯正治療

幅広い選択肢を示してベストの矯正治療を提供

医療法人 オーソネットワーク

 理事長  田井 規能先生

 

岡山市北区の「たい矯正歯科」は矯正治療に特化した歯科クリニックで、患者さんごとのニーズに応じた幅広い選択肢を提供しています。医療法人の理事長を務める田井規能先生は、症例研究や論文発表にも熱心に取り組んでおり、また口腔外科や耳鼻科など他科とも積極的に連携し、常に新しいチャレンジを続けています。従来の枠組みを超えて進化する矯正治療の最前線について伺いしました。

 

 

 ◆患者さん自身が治療を選べる時代

―最近のトレンドついてどのように対応してまか。

田井 高度情報化時代と言われる現在、患者さんのニーズも多様化しています。当院は、その多様化したニーズに対し、経験豊富なベテランの先生と新し技術を柔軟に取り入れている若手の先生が互いの知識や技術を融合させて対応しています。さらに、矯正専門の技工所「メディカル・コミュニケーション」社と密接に連携し、価格を抑える一方、迅速に個々の患者さんに適した装置を提供しています。。このチームワークが大きな特徴と思っています。

組織の特徴を活かし、例えば、最近流行のこのマウスピース矯正(=写真)に対しても、アレンジを加えて提供しています。従来のブラケットやワイヤーなどの矯正装置を使わず、患者さんひとりひとりに合った、プラスチック製の透明なマウスピースを使って、歯列を整えていく画期的な矯正治療法です。一カ月で0・5ミリほど歯を動かせますから、ちょっとしたスキマを寄せるなど小さな矯正なら十分です。スキャナーで歯のデータを読み取って、コンピューター上でもとの場所から0・25ミリだけ動かす毎にマウスピースを一つずつ作成し、目標とする位置までのマウスピースを同時に作製します。

 マウスピース矯正は1997年ごろアメリカで登場しましたが、日本で広く普及してきたのはここ5~6年です。大手矯正メーカがトータルケアとして提案するシステムもあれば、民間技工所が患者さんごとに治療ゴールを段階的に設定し、提案する仕組みもあります。つまり、時代のトレンドのマウスピース矯正も多岐にわたります。注意すべきは、すべての症例に適応する方法は存在しなく、きっちりと仕上げるためには、従来の固定式の装置をつける必要もあり得るということです。そのため単に、従来の固定式装置の装着期間の短縮をする目的で使われることもあります。治療目標の設定によっては、従来の矯正治療と比べれば費用も時間も大幅に少なくできることもあり、エステ感覚で手軽に利用する若い女性もいます。とりあえず一部分だけ治して、しばらくしてから続きをやることも可能です。治療の場合はずっとマウスピースを入れておく必要がありますが、現状維持なら夜だけとか週に数回つけるだけで大丈夫です。

 かつては歯科医師が「こうするのが良いのだ」とゴールを決めていましたが、今では患者さん自身が様々な選択肢からチョイスできる時代になってきたとも言えます。治療の選択を指南するコーディネーターが重要な役割を担っていると実感しています。

 

 ―矯正はどんどん進化しているのですか。

田井 その通りです。何年もかかる本格的な矯正を行うには私たち歯科医師が主導して詳細に検討します。例えば、歯並びが良くなっても角度に問題があると口をうまく閉じられないというケースがあります。そういう人はポカンと口が開いてしまいますが、歯の角度を変えればきちんと閉じるようになります。スペース不足の補正ためにあえて歯を抜いて行うこともありますが、歯の角度を変えるために抜歯を行うこともあり得ます。さらに、かみ合わせの位置のみならず、左右の口角(咬合平面)の高さそろえることや咬合高径を調整することで、顔の輪郭や表情まで変わることもありますから、それらを見極めて幅広い選択肢を提示するというコーディネーターの役割がここでも重要となりそうです。

 ある一人の先生が方針を決めるのではなく、客観的なデータに基づいて複数の専門家が議論します。当院には非常勤を含めて約40人の歯科医師がいますから、患者さんが想定している費用と期間を前提に、いくつかのグループが選択肢を提案します。治療によって顔つきも変わりますので、きちんとゴールを設定して、必要によっては、こうなりますというシミュレーションを示します。

その過程では色々な意見が出ますが、それぞれエビデンスに基づいています。ドクター陣は基本的に論文を書いてジャーナルに出していますから、それは世界中の専門家から一定のコンセンサスを得ている治療体系に沿うものであり、そうでなければ他の先生を説得することはできません。

 そのためには、日頃から地道にデータを採得し、整理し残しておく必要があります。偶然うまくいったケースを出しても説得力がないので、日頃からコンスタントに論文を書いて、いつでも見てくれというスタンスでやっています。

 

 ◆検証に耐えうるエビデンスが必要

―客観的な議論が大切なのですね。

 私はアメリカの大学で臨床教授を務めていますが、向こうでは特に多様性が重視されますし、矯正治療は長い期間がかかるので、一人の先生が背負えるものではありません。訴訟社会という背景もあり、何人もの先生が連携して客観的なデータを残しておくことで、後からチェックできる体制が備わっています。また、一人ひとりの責任感も大きくなります。

 当たり前ですが、歯を抜くというのは大ごとですから、それなりの裏づけが必要です。きちんとエビデンスがあって、それをやったこうなるというシミュレーションがあって、ゴールがきちんと示されている。そうやって初めて、じゃあやってみようかという話になるのです。それらを別の先生がチェックすることで、さらにクオリティの向上にもつながります。。

近年は、単に歯を並べるのではなく、何のために治療するのか、どのようなメリット、デメリットがあるかなど、開始前に治療目的をはっきりさせたい患者さんが増えていることを実感します。矯正によって姿勢が変わることもあるし、笑った時の歯茎の見え方が気になるという人もいます。費用と時間をかける以上、三次元のシミュレーションをより充実させ、治療前後の変化を示すことも期待されています。

また、矯正治療では長く経過を診ていくことが大切です。治療の時期は毎月こちらに来ていただきますが、その後は年1回ぐらいしかお会いしません。それでも、きちんと写真などの記録を残しておく。来てくださる以上は、主治医として、常に現状を把握できるように心がけています。

 

 ―他科との連携にも積極的に取り組んでいらっしゃるとのことですが。

田井 例えば、睡眠時無呼吸症候群のケースでは耳鼻科の先生と一緒にやることがあります。咬み合わせの具合によって誘発されている場合などは、矯正治療の適応と考えています。逆に、矯正で歯並びが良くなっても、気道が狭くなってしまうような場合も想定されるので、常に気を配るようにしています。矯正治療で上顎骨の拡大に際し鼻腔の拡大も認められ、結果的に鼻の通りが改善する場合もあります。すでに症例報告という形では出版していますが、さらに評価の高いジャーナルに投稿することで、将来的に、耳鼻科の先生の賛同を得ていければと願っております。

 いわゆる「受け口」、「非対称」、「下顎後退症(アゴがない)」「開咬(前歯がかみ合わない)」の治療では、程度によっては、骨を切って手術を伴う矯正治療という方法もあります。その場合、大学病院に2週間ぐらい入院し、歯科と口腔外科の連携で全身麻酔による術を行う必要がありますが、保険適応なので費用としては大幅に安くなります。

 こういった様々な治療も、たくさんの専門家が集まることによって治療レベルが向上します。当院には、東京や大阪のほか九州地方から来てもらった先生もいます。だいたい非常勤の先生は月1回で、患者さんはその日にあわせて来院してもらいます。最近はインターネットもあって患者さんの知識も豊富になっていますし、一人の歯科医師の意見では安心してもらえないということもあります。

◆さまざまな分野の先生方と連携を

―どのようなモチベーションで日々のお仕事に取り組んでいらっしゃるのですか。

田井 大学を卒業後、しばらく一般の歯科治療をやっていたのですが、矯正に出会って一気に面白くなり、こちらへシフトしました。矯正は自分で学んだことを理論的に提案できる部分が大きく、そこが魅力的です。開業後もずっと研究を続けていますが、患者さんに幅広いバリエーションを提供したいというのが今も大きなモチベーションになっています。好きでやっていますから、忙しくても苦になりません。

矯正では、小さなころから診る患者さんも多く、十年来のおつきあいになります。治療だけでなく、その間にお話したことは良い思い出です。なかには成人してから歯科医師や技工士・歯科衛生士になった人もいて、こちらもうれしくなります。そして、長いおつきあいになる治療だからこそ、10年先を見すえた方針が重要になります。本当にこれで良いのか、後から後悔させることはないか、ずっと勉強を続けないといけない。

 研究と臨床は一見あまり関係がないように思えるかもしれませんが、実は様々な論文が患者さんの選択肢を増やすことに大変役立っています。もし関心を持たれた先生がいらっしゃれば、ぜひ連携させていただきたいと思います。どこへでも足を運びますので、ぜひお声がけ下さい。

 

【 田井規能(たい・きよし)先生 ご略歴】

歯科医師。「医療法人オーソネットワーク」理事長。1992年、徳島大学歯学部卒業。2000年、「たい矯正歯科」開業。2012年、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科にてPhD。2009年より米国アリゾナATS大学矯正科にて臨床准教授(非常勤)、2015年より同臨床教授(非常勤)を務める。2010~2014年、韓国キョンヒー大学客員准教授(非常勤)。2011年、「Joseph E. Johnson Table Clinic

Awards」受賞。日本矯正歯科学会専門医。日本成人矯正歯科学会指導医、専門医。アメリカ、フィリピン、中国、韓国、台湾など海外で多くの招待講演を行う。